2016 column vol2



4年学生コーチ 勝藤洋平


2016/10/1

向田さん 挿入

プレイヤーから学生コーチへ
去年の終わりに手術をした。手術後はBとCを行き来したけれど、練習試合でも全力を出すことはできなかった。Aに上がって活躍するためには全力を出せるようにならなきゃいけないけれど、このままじゃ出せないだろうなと思った。だから、そんな中途半端な状態で続けるよりは今まで俺がやってきたことを後輩に伝える方が、俺にとっても他の選手にとっても良いんじゃないかと思った。下級生の相談に対していろいろ教えているうちに、意外とこういう路線もありだなと思い始めた。
ちょうどその頃に、品川(*1)から学生コーチの話をもらった。
初めは悩む部分もあったけど、そんなに多く悩むことなく決断した。実際に話をもらったとき自分の中でも案外すぐにやろうと思えたし、こういう関わり方でチームに貢献できて皆と日本一になれるなら、俺はそれでいいと思った。一緒にプレーはできなくても、一緒に戦っていることには変わりないと思っているから。

ただ、俺はいわゆる「コーチ」っぽくなることがなんとなく嫌だった。どんと立って、練習メニューを与えて、「お前らやれ」みたいなイメージ。そんなに自分が偉いとは思っていないし、それよりは一部員としての立場のほうが俺の中では強い。だから、どちらかというと一人一人のサポート役としてコーチをやるという話で引き受けた。
(*1 29期(4年)MF#31品川康宜。2016年度主将。)

向田さん 挿入

もちろん不安もあった。俺は怪我をしている期間が長くて実質一年間くらいしかプレーしていないし、Aに上がったこともない。俺がコーチになっても、Aに上がる実力がないから今年コーチになります、みたいに思われるんじ ゃないかなと思った。それに俺が教えて本当に選手に伝わるのかなとか、それほど信頼されていないとしたら俺がコーチをやっても意味ないんじゃないかなとか思ったりもした。だったら同じプレイヤーとしてイメージを伝えることはできるし、他にもできることはあるはずだから、コーチという役職じゃなくても良いんじゃないかなと思った。
でも、うどさん(*2)や山さん(*3)にそういう不安を伝えたときに、「信頼はこれから作っていくものだから、今ビビっていても仕方ない」と言われて、確かになと思った。自分でコーチをやると決めた以上うだうだ言っていても仕方なくて、信頼がないなら作ればいいとは自分でも思っていたから、それをうどさんたちからも言ってもらったことで、「コーチとして本気で日本一になろう。」と思えた。今コーチとして皆からどう思われているのか俺はわからないけれど、試行錯誤しながら自分のスタイルは少しずつ見つけられているのかなと思う。
(*2 10期鈴木直文。2016年度テクニカルディレクター。)
(*3 23期山下尚志。2016年度Aチームヘッドコーチ。)

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「もっと早く」
「もっと早く」というチームスローガンは、みんなもっと意識したほうが良いんじゃないかなと常々思っている。
「一回言われてできなくても、もう一回言われる前にいろいろ試しながらできるようになる人は、成長が早い人。成長が早い選手になるためには、変化しようと試行錯誤を繰り返さなければいけない。シーズン最後までなんとなく同じことをして過ごすのではなく、一回一回の練習で確実に上手くなろうとするべき。」
春合宿で品川がスローガンを掲げてこう説明したときに、俺はかなり納得できたし共感できた。このスローガンだったら自分もチームも強くなれそう、上手くなれそうと強く思った。いろいろなチャレンジをして変化していかないと成長できないとはずっと思っていた。今シーズンに限らず、チャレンジして変化するというのは常に大事なことだから、皆にも習慣として早いうちに身につけて、今後過ごしてほしい。

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でも今のチームを見ていて、今シーズン掲げられた「もっと早く」を皆どれだけ理解しているのかな、どれだけやろうとしているのかな、と疑問に思う時がある。変化しようと頭でもっと考えないと気付きもないし成長もない。自分のできることだけをやっていても上手くはなれないし強くもなれない。そこをもっと選手たちにも意識してほしい。特にBやCの2年生は、もっとチャレンジしても良いと思っている。自分なりに試行錯誤して、一回一回の練習で一つずつでも気付きを得てできることが増えれば、ただ練習をこなしている選手よりも圧倒的に上手くなれると思う。ワンプレーずつどうすればよかったのかを考えて、分からなかったら先輩に聞く。それができていれば自然と上手くなるし、自然と先輩ともコミュニケーションがとれていろいろ教えてもらえるようになる。皆がそういう良いスパイラルに入れると良い。

自分がプレイヤーだった時は、前日に練習メニューが流れたら、「明日の練習では、これを意識してこれを試そう」みたいに考えてやっていたから、気を付けるポイントを意識しやすいようなメニュー構成を考えるとか、一から全部教えるんじゃなくて選手自身が考える手助けをするように意識している。選手からは何を意識するメニューですか?と聞かれることもあるけれど、Bの選手もCの選手もそこをもっと自分で考えられると良いなと思う。俺も練習が終わった後は毎回、このメニューでよかったかなと考える。選手に変化しろと言っている分、自分も変化しようとしないとだめだから。

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伝えたい想い
今年コーチになって、俺はもうプレイヤーとしてみんなと一緒にフィールドで戦うことはできない。でも入部したことは全く後悔していないし、この部に誘ってくれた小田切さん(*4)や平野さん(*5)には本当に感謝しかない。出来ることなら、感謝の想いをフィールド上のプレーで表現したかった。1年生のときからもう怪我するなよとずっと言われ続けたのに怪我し続けて、「あんなに誘ってくれたのにごめんなさい」という気持ちと同時に、「この部に入るきっかけをくれてありがとうございます」という気持ちは伝えたい。

怪我したのは自分のせいで仕方ないけれど、それでも同期や後輩はコーチとして俺のことを受け入れてくれている。今こうしてコーチとして頑張れているのも、小田切さんをはじめとする先輩や同期、後輩のおかげ。怪我が続いて部をやめたいと思ったこともあったけれどやめなかったのも、同じような怪我でも活躍していたドリさん(*6)をはじめ、いつも声をかけてくれた先輩方のおかげ。いろいろな人のおかげで今の自分はいると思うし、本当に感謝している。

(*4 27期小田切拓也。)
(*5 25期平野崇。29期が1年生の時のフレッシュマンヘッドコーチ。)
(*6 28期鈴木基紘。)

向田さん 挿入

コーチという関わり方になってからは、上手くいっていない選手を見ると自分の力不足に悩むことが多い。逆にCチームでくすぶっていた選手がBチームで活躍したり、Bチームで頑張っていた選手がAチームでリーグ戦に出場したりというのは嬉しく感じる。ただ、やっぱり同期への想いが俺の中では一番強い。ほとんど一緒にプレーできなかったけれど、俺は今でも一緒に戦っているつもりで日々過ごしている。鐵見(*7)とかが活躍しているのは嬉しいし、簑島(*8)がリーグ戦で点を取ったときもめちゃくちゃ嬉しかった。ありきたりかもしれないけれど、やっぱり最後は29期に頑張ってもらいたいし、29期で日本一になりたい。29期とフィールドで笑って締めくくりたい。

今シーズンも終盤で、もう後は負けたら引退という状況まできた。今のチームに一番足りないものは気持ちじゃないかなと、俺は思っている。上手くなりたい気持ちとか、試合に出たい気持ちとか、勝ちたい気持ち。最後は気持ちが勝負を分けると思う。俺ら29期は1年生の時からずっとFINAL4(*9)で負けていて、その先の景色は見たことがない。だからこそ俺は、今年このチームで勝ちたい、このチームで日本一になりたいという強い気持ちを持っている。もっと一緒に練習したいし、もっと強いチームを一緒に作っていきたい。少しでも長く、強いチームでありたい。

(*7 29期(4年)MF#1鐵見周平。)
(*8 29期(4年)MF#72簑島俊。)
(*9 関東学生リーグ1部準決勝のこと。)

向田さん 挿入

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