【2023ブログ企画 vol.27 角田 慶季】(4年主務/AS)
2023/09/14
「クロスを握らずとも、勝ちの中心にありたいです」
21シーズンのロスターに書いたこの願望は、自覚してしまったために自分を苦しめつつも、今でも原動力になっている。
2020年の9月、まだ大学にも数えるほどしか行ったことのない時に、入部した。同クラの二人に誘われたからという単純な動機だったのだが、入部を決めた裏には、自分と疎遠なスポーツの世界で自分なりのやり方で結果を出してみたいと思ったのを覚えている。
ところが当然甘いものではなかった。握ろうと思えばクロスを握れてしまうのに、男TSという特殊な立場を身を置くことに自分を納得させられなかった。当時は広報なりデータなりのツールを持っていなかったから、同期がラクロスを上手くなり勝敗に絡んでいくことを見ると、ただ無力感を突き付けられているようで、ウィンターのころにはチームと逆行して密かに心が折れていた。
でもそこで辞めるにはあまりにも人間関係が惜しかったから、この特殊な立場にいる自分を納得させるために、21シーズンからは自分なりの方法でチームを勝たせようと決心した。これが冒頭の言葉につながっている。
21では本当に何でもやった。広報のほとんどに手を出すようになり、Bコーチと話し合って毎日Bのスタッツを出すようになった。他にも審判とかrelationsとか目につくもので自分ができるものには何でも参加していった。36期の学年キャプテンに立候補もしてみた。これはさすがに違うなと思って辞退した。
実際にどこまでチームの強くできたのかはわからないが、自分がこのチームを少しでも変えられているような気がして、とにかく楽しかったのを覚えている。納会では石川さんに「BEST SOPHOMORE」という賞をもらい、チームへの貢献を認めてもらえたようで本当にうれしかった(ちなみにテレビ台にすごく大事に飾っています。)
それなのに、22シーズンを棒に振った。
きっかけは、部に還元できると思ってインターンや外部のコミュニティに参加するようになったこと。そこで世界が広くなり、急に自分が小さく見えるようになってしまった。大学も大学だから、部のすぐ外の世界にはいろんな人がいた。学生なのに自分の会社を軌道に乗せている人、学部生なのに学問の第一線に立とうとする人。彼らが社会とか何か大きなものを相手に自分の力だけで物事を成し遂げようとしているのを見ると、急にまた、色々取り組めど結局は直接点を決められない自分に納得できなくなった。
そこで完全に部活人としての自分を見失ってしまったために22シーズンは散々な結果になった。広報は少しずつ参加するユニットが減っていったし、審判も辞めた。かつてのように積極的に変化を起こそうとする姿勢も消えていき、気づけばチームにただぶら下がっているだけの人間になっていた。
今だから言えるが、22シーズンを区切りに辞めようと決心していた。
他にやりたいことがいくらでもあった、といえば前向きな感じもするが、何より着実に力をつけチームにとって不可欠な存在になっていく同期に対して、完全にお荷物になった自分に絶望したからである。前年の自分と、自分を信じてくれた人に対する後ろめたさや申し訳なさにも苦しんだ。
ところが一転、部活を続けると決意するどころか、あろうことか主務にまでなった。
きっかけはこれもまた、外の世界から部活を見つめなおしたことである。
その頃多くの社会人の方と接点を持っていたのだが、あることに気づいた。この部活の愛すべき異常性である。すべての人間が同じベクトルを向いて同じコミットメントを持ちつつも、各々の動機はエゴイスティックで多種多様だという集団は、トップティアの学生スポーツの世界にしか基本存在しえないのだと思う。4年間という明確に決められた制約の中、自分なりの動機をもとに必死に努力する人間と同じくすることができ、かつその目標が同じであるということを経験できるのがどれだけ貴重で特権であるか、この機会を逃しては後々ずっと後悔すると思った。そしてこの過酷な日々を抜けた先にある景色を見てみたいと思った。
一方で当時の自分は部活にとって完全にお荷物だったから、相応の覚悟を持ち、自分の存在意義を見出せないと20,22の二の舞になると思った。点を決められないという厳然たる事実は変わらないのだから、いかに自分を納得させるかである。だから、今度は立場を得て錨を下ろし、自分だけのバリューを作り出すことで自分が直接的に勝敗に関与していると納得できるのではないかと考え、主務に手を挙げた。外野から見れば完全に大穴だったと思うけど、自分なりの覚悟とビジョンが見えたからこその選択だった。
さて、そうして部活人生をリスタートさせた23シーズンも、当然順風満帆なわけではなかった。自分のやっていることがただ自分の存在意義を偽装しているだけにも思えいくらでも心が折れたし、犠牲にしてきた選択肢を思いやるたびに部活人としての最期に不安を覚えた。そのたびに22末の自分が正しかったか悩んだ。それでも今の自分の成す行動と未来の結果でしか過去の自分の選択を納得できないのだから、やるしかなかった。蓮が書いてたやつね。
部外の自分に近しい人から見れば完全に狂気的な人間に見えていたようだが、実際自分の原動力は狂気だと思う。この部活にいて見れるはずの景色を見届けたい、そのためにはチームの勝敗に関わりたい、お荷物になりたくないという狂気でここまでやってきた。
結果はまだまだ出ていない、全然納得もできていない。そんなわけで、武蔵戦は23BBの第2Qくらいでないと大いに困る。まだまだこの先の景色を見たいし、その景色には自分も寄与したからたどり着けたのだと胸を張れなければ意味がない。みんなもそうだと思うけど、やるしかないよね。
4年主務/AS 角田 慶季