【2024Fウィンターブログ企画 vol.20】秋田 裕登(MF)



『見てろよ世界』


2024/12/7


                        

【2024Fウィンターブログ企画 vol.20】 秋田 裕登(MF)



序列。席次。順位。合格と不合格。この世には明確に一定の境界線が存在する。一見ただの一境界に思われる境界線はそれを隔てあまりに明確な違いを産む。0.001点の違いがあまりにも大きな違いを産む、そんな大学受験を経験してきた僕らはこうした境界線の存在を痛いほど知っているはずだ。

4月。柔らかな春風と桃色の光とともに大学生活が始まる。新歓で少し浮き足だったキャンパスの中でただ1人、少し奇異の視線を感じながらクロスを握りしめて歩く。40期で一番初めに入部を決めた僕は、その一番であることにどこか優越感を感じていたんだ。5月になってクロスを手に歩く人影が1人でなくなっても、自分は他の仲間とは違う、ただ1人の一番なんだって。そう確信していた。

6月。僕は一年生練を離れ上級生練に合流した。他の一年生との間に引かれた明確な境界線は浮つく僕の心にはあまりに蠱惑的で、自分はみんなより上の存在なんだと過信していた。でもそんな背伸びを繰り返した生活が僕にとって良いものなわけがなかった。僕のラクロス人生は徐々に腐っていたのに、僕はそれに気がつけなかった。

8月。背伸びが生んだ優越感に明確に終止符が打たれた。繰り返した背伸びは筋肉痛を産む。明らかにラクロスがうまく行かない。サマーを控えて一年生練に復帰してもどこかうまく行かない。
「俺はBリーグに出ていたんだ」
その事実が僕を盲目にした。実力不足は明らかでもそれから目を背けてしまう自分がいる。どこかで狂ってしまった歯車は簡単には戻せない。サマーでは日の目をみることなく敗退した。上級生チームから一年生チームに降格して、代わりに別の一年生が上級生チームに昇格した。謙虚さを失い背伸びを繰り返した僕のラクロス人生は、文字通り狂ってしまった。
「負けた。俺はあいつより下なのか?」
「頭じゃわかっていたことだろう?ずっと前からうまくいっていなかったじゃないか。」
「まだ認めたくない。安易にプライドを捨てられないだろう?」
歯車は狂い続ける。自分が負けたことは頭じゃわかっている。でもそんな自分がどこか受け入れられない。
「これまでの人生でもなんだかんだうまくいってきたじゃないか」
「一瞬抜かされただけ。きっとすぐ追い抜かせるはず。」
「まだ、負けてない」

思い返せばうまくいきすぎた人生だった。自分が上手くやれていることに疑問符をつけようとしたこともなかった。
僕は明確な負けを受け入れられなかった。

それからの日々は地獄の日々だった。チームメイトがみるみる上達していくのに自分は変われない。うまくいっていない。でもそれを認めたくない。


12月2日。僕は負けを認めた。ここでは詳しくはかけないけれど、産まれて初めて味わった敗北の味だった。チームメイトの方が俺より上手い。大学受験を経験して誰よりも知っているはずの境界線の大きさ。自分は下の存在なんだ。
「悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。…」
初めての敗北。ただひたすらに悔しい。
「でも」
コーチに言われた。お前ならできる。
「やってやろうじゃないか」

敗北が反骨心を産んだ。
生まれて初めての負けず嫌い。
もう誰にも負けたくない。
見てろよ40期。
見てろよウィンター。
見てろよラクロス。

いつも早起きする自分を気遣ってくれる家族。いつも隣で一番に自分のことを応援して支えてくれるあいつ。かけがえのないチームメイト。

12月21日。もう2週間しかない。
ヒーローになりたいんだろ?
なら俺が一番うまくなって俺がチームを勝たせる。

感謝。ラクロスへの想い。ありのままの自分。
全てをウィンターの舞台で表現する

「上等だ。やってやろうじゃねえか。見てろよ世界」

向田さん 挿入

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